世界銀行(正式名称:国際復興開発銀行―IBRD)は、世界で最大かつ最も頻繁に起債を行っている債券発行体のひとつでもあり、年間数百もの債券(世銀債)を発行しています。世界銀行は1944年に設立され、1947年に最初の世銀債を発行しました。以後、絶えず革新的な世銀債を開発し、新しい発行市場を切り開いて、世界中の幅広い投資家層を開拓してきました。世界銀行には、Moody’s 及び S&Pより最高の債券格付であるトリプルA(Aaa/AAA)が付与されています。
世銀債の新規発行必要額は、主に持続可能な開発プロジェクトへの融資動向に基づいて決定されます。世界銀行の融資額の変化にともない、年間の起債総額、同時に世銀債発行プログラムも変化してきました。2023年度(2023年6月期)には、世界銀行は総額420億米ドル相当(約4兆2,000億円)の世銀債を様々な通貨で発行しました。2023年度以降の起債額は450-550億米ル近辺で推移する予定です。2023年6月30日時点での世銀債の発行残高(=総借入残高)は約2,373億米ドルでした。
なお、世銀グループで最貧国を支援する国際開発協会(IDA)と民間部門に投融資を行う国際金融公社(IFC)も、債券を発行しています。
世界銀行は世界でも有数の開発金融機関です。世界銀行が資本市場で調達した資金は、極度の貧困の撲滅と繁栄の共有促進を持続可能な形で達成することを目的に活用されます。この世界銀行が掲げる「2つの目標」は、持続可能な開発目標(SDGs)とも連携しています。具体的には、世銀債で調達した資金は、人々への投資、環境保護・気候保護、民間部門の成長支援、公的部門への援助、経済改革促進、そして他の資金供与者との協調融資などに使われています。
世界銀行は第二次世界大戦による荒廃の中で1944年に設立され、戦後の経済復興のために最初の融資を欧州諸国に行いました。1960年代に入ると、世界銀行は支援の目標を貧困撲滅とし、中所得国に対する融資に注力するようになりました。
世界銀行が発行したどの世銀債もいかなる政府の直接的な債務ではありません。しかしながら、世銀加盟国が世銀に出資している資本金に対する関するコミットメントによって世銀債の信用力は全体として裏付けされています。これは、格付機関および市場参加者が世界銀行を「ソブリンに類する発行体」とする理由のひとつです。世界銀行は、Moody´s および S&P.よりトリプルA(AAA/Aaa)の債券格付がされています。
現在、世銀出資国は189ヶ国です。上位出資国はアメリカ(授権資本の16.64%)、日本(7.59%)、中国(5.88%)、ドイツ(4.50%)、フランスとイギリス(各4.12%)です。世銀の授権資本金は3,178億米ドルですが、そのうち2,960億米ドルが請求払資本金です。請求払資本金は、世銀が自己の債務を履行するために必要な場合のみ、出資国への払込み請求がなされますが、75年間の世銀の歴史において世界銀行は今まで一度も資本金の払込み請求をしたことはありません。
世銀債は60年以上にわたって主要な格付機関から、最高の格付であるAAA格が与えられています。この評価は1947年の最初の債券発行以来世銀債を歓迎してきた資本市場によっても確認されています。
世銀債が高格付を得ている理由は主に6つあります。 第一に、世銀債は、加盟189ヶ国により、その信用が裏付けされていること。 第二に、世銀は総資本(授権資本+引当金+剰余金)に対する融資(含む保証)の比率を最大1対1とする非常に慎重な財務政策を保持していること。現在この融資比率は、資本金の71%という低い水準にとどまっていること。第三に、世銀は、1964年以降安定した収益を維持していること。 第四に、世銀は新発債の発行のタイミングを柔軟にするために、多額の流動性資産を保持していること。 第五に、慎重な融資政策、融資の種類・地域等の分散により、世銀の融資ポートフォリオの質が維持されていること。最後に、世銀は国、または国の保証が付与されたプロジェクトにのみ融資を行い、さらに主要格付け機関は、世銀を借入国の優先債権者と位置付けています。
世界債は、環境、社会、ガバナンスの観点が統合されたプロジェクトサイクルで実施される世界銀行の持続可能な開発プロジェクトの資金調達を支援しています。これらは、「環境・社会フレームワーク(ESF)」に明確に示されている世界銀行の基準に沿っています。
すべての世銀債は、ESG投資対象に適合する「投資テーマ」を内包する債券であり、国際資本市場協会(ICMA)のガイドラインに整合しています。「サステナブル・ディベロップメント・ボンド」は、同サステナビリティボンド・ガイドライン、「グリーンボンド」は、同グリーンボンド原則に整合しています。(詳しくは世界銀行サステナブル・ディベロップメント・ボンド・フレームワーク又は世界銀行グリーンボンド・フレームワークをご覧ください。)
世界銀行は、気候変動への対処の緊急性等に関する投資家との対話と世銀の気候変動問題への取組みを発信すべく、2008年に世界初となる「グリーンボンド」という名称の債券を発行しました。初のグリーンボンドは、投資家の気候変動リスクに関する認識の高まりと、シンプルで運用方針に適合し且つ気候変動問題に対応するプロジェクトを支援する債券への需要に応えるものでした。その後、このグリーンボンドは透明性の向上と投資のインパクトに焦点を当てた市場の基準となりました。世界銀行は引き続きグリーンボンドを発行していますが、気候変動問題対処を投資のテーマとするサステナブル・ディベロップメント・ボンドの発行が急速に拡大してます。
サステナブル・ディベロプメント・ボンドは、環境と社会の両方に配慮したプロジェクトへの融資原資として、世界銀行 気候変動行動計画 (2021-2025)で説明されているような、すべてのプロジェクト・プログラムに対する気候変動を考慮した包括的なアプローチへの支援にも重要な役割を果たしています。例えば、全ての世界銀行のプロジェクトでは気候変動リスクのスクリーニングが実施されています。2023年度の国際復興開発銀行(IBRD)が実施したプロジェクト数の92%に気候変動対策と気候変動対策資金拠出が含まれていました。これには保健や教育等、これまでは「社会的分野のプロジェクト」との位置づけで、必ずしも気候変動対策への貢献が注目されていなかったものも含まれています。
世界銀行は資本市場で購入可能なさまざまな種類の世銀債を幅広く発行しています。75年もの間、世銀は世界中の機関投資家・個人投資家双方の具体的な要望を満たすために新しいタイプの世銀債を絶えず開発し続けてきました。
世界銀行が発行する金融商品はおおまかに4つの種類に分類されます。 (1)主要通貨で発行されるベンチマーク債とグローバル債。高い流動性と良好なスプレッド・パフォーマンスが期待されることにより、主に機関投資家向けに販売されます。 (2)個人投資家や機関投資家向けの主要通貨ならびにエマージング通貨建てのストレート債。最小の信用リスクを取りつつ、市場リスクを取る見返りとしての追加金融リターンを期待できます。 (3)ストラクチャー債。機関投資家の個別の資産負債管理に適合するように世銀債をテーラー・メイドすることが可能です。 (4)米国ドル建て割引債(期間:1日~360日まで-一部の市場のみで発行)
世銀債を発行する重要な目的の一つは、投資家のご要望に的確にお応えすることであり、世銀債の発行に際しては「最大限の機動性」を重視しています。例えば、どの地域のビジネス・タイムにおいても、ほとんどの主要通貨で様々な年限と金額の世銀債を短期間で発行可能です。また、ユーロ債、グローバル債はもちろんのこと、多くの国々の国内債フォーマットと決済システムに対応しています。また、通貨・金利オプション等の様々なストラクチャー債のご要望にもお応えしております。世界銀行は、主に世銀債の引受を通じて様々な金融機関の協力を得て、世界各国の投資家に最高水準の金融サービスを提供しています。
世界銀行が発行する割引債は、割引債プログラム で米ドル建にて発行され、期間は1日から360日となっています。ユーロドル市場ならびに米国国内市場にて特定の証券会社を通じて継続的に発行されます。 世銀の割引債の財務代理人はニューヨーク連銀です。金利・期間等の情報については特定の金融機関から入手可能です。(金融機関のリストにつきましては、 割引債世銀説明書の付属資料をご覧下さい)。
世銀が発行するベンチマーク債は、流通市場で高い流動性と優れたスプレッド・パフォーマンスを機関投資家にもたらすように設計されたものです。ベンチマーク債は引受け業者のコミットメントを得て、債券の残存期間にわたって、活発な流通市場での取引とマーケット・メイクがなされます。世界銀行はベンチマーク債の国債に対するスプレッドを定期的にモニターし、一貫した値付けと優れたパフォーマンスが維持されていることを確実にしています。
ベンチマーク債は主要な国際資本市場の投資家に同時に販売されることが可能な「グローバル」債形式で発行されることもあります。グローバル債はいくつかの決済制度間での決済が可能であり、典型的なのは、欧州のユーロクリア/クリアストリームとアメリカの連銀のブックエントリー・システム/DTCの振替え決済です。グローバル債は世界中に販売されることから、通常非常に大きな金額(10-60億ドル)になり、市場流動性も大変高くなります。
ベンチマーク債は近年世銀が発行する債券の総額の4割を占め、今後も資本市場から資金調達するための主要な手段の一つと考えています。 (世銀グローバル債一覧(英語)。
世界銀行が発行するストラクチャー債は特定の投資家層のニーズを満たす特別なキャッシュフローを提供する世銀債です。市場価格変動リスクに対する見返りとしての金融リターンの要素を世銀債に組み込むことで、通常の固定利付債よりも高い金融リターンを期待できます。
§ ストラクチャー債は以下のような特徴があります。
§ コールおよびプット・オプションによる期限前償還。
§ ステップ・アップ・クーポンまたはステップ・ダウン・クーポン。
§ 利払い通貨と償還通貨が異なる二重通貨債。
§ 為替相場動向によりクーポンと償還金額が決定されるもの。
§ 当初は固定金利だが、その後SOFRのような市場金利に基づく変動金利のクーポンとなるもの。
§ 予め決められた株式インデックスのパフォーマンスに基づいてクーポンまたは償還額が決定されるもの。
世界銀行の年間の資金調達額におけるストラクチャー債の比率は増加し続けてきており、最近では新規に発行される世銀債全体の約2割に達しています。
はい。世界銀行が発行する私募債のほとんどが、世銀に直接または引受金融機関を通じて間接的にコンタクトがある機関投資家の特定のニーズを満たすように設計されています。私たちは主要な投資家である年金基金、保険会社やその他アセット・マネージャーの具体的な資産負債管理にお応えできるようなストラクチャー債を組成しています。このような世銀債の発行は、世銀内のストラクチャー債担当グループが、早い時には数時間で対応できるようになっています。世界銀行が発行する割引債も、決済日、発行額、年限等、投資家毎の個別ニーズに対応しています。
世銀債は、全ての主要な国際通貨で発行されています。2021年度には16の通貨により世銀債を発行し、これまでに実に60種以上の通貨で起債を行ってきました。世界銀行は、投資家の皆様に運用資産の対象として可能な限り広範囲な通貨を提供することを目的にしています。多くの場合、これは新しい発行市場を開拓につながり、結果として当該通貨の国内資本市場の発展に寄与することになります。世銀債の大半は米ドル、ユーロ、英ポンドといった主要通貨建で発行されますが、各種ドル(豪州、ニュージーランド、カナダ)での世銀債発行も積極的に行っています。さらに世銀債は、アジア、東ヨーロッパ、南ヨーロッパ、アフリカやラテンアメリカといった新興市場の様々な通貨建でも発行されています。
世銀債の発行金額は、投資家の需要と発行される世銀債のタイプにより異なります。近年の新発債の規模は1千万米ドル相当額(例外的にこれよりも小額の場合もあり)から最大80億米ドル規模となっています(これまでの実績ベースの数値)。大型で流動性の高い世銀債は通常、ヨーロッパ、アジア、中東や米国の機関投資家に販売されます。比較的小規模な私募債形式の世銀債は主に、日本や欧州の個人投資家からの需要を受けて発行されています。同様に、少数機関投資家のきめ細かいご要望にお応えした私募債発行も頻繁に行われています。なお、割引債は最低50,000米ドルから、様々な金額で発行されています。
世銀債は様々な期間で発行が可能です。割引債は1日から360日、また一般的な世銀債は最短1年から50年超の発行も可能です。私たちは機関投資家の要求にお応えするためには、どのような満期設定でも綿密に検討してます。なお、最近の世銀債の平均的な満期は5年から10年となっております。
多くの債券市場において、世銀債は国債を上回る利回りとなっています。また、世銀債にはAAAの格付けが付与されており諸加盟国政府の支援にも世銀は支えられています。1947年の第1回債発行以来、世銀債は投資家に購入されてきました。多くの機関投資家は運用ポートフォリオを多様化させて世銀債を資産運用に組み込んでおり、クレジット・リスクを付加することなく利回りを高めています。世銀債はほとんどの国際債券指標に含まれており、投資家は資産運用の指標として利用しています。
世銀債は日本では原則証券会社を通じて販売されています(一部銀行の証券仲介もあり)。投資家の皆様は金融サービス提供機関より世銀債の価格等の情報を入手することができます。大型公募型の世銀債の価格は証券取引所や主要金融端末および金融新聞からも照会可能です。
世界銀行は全ての金融市場において幅広い引受金融機関との取引があります。現在、世銀債は30社ほどの金融機関に引受けられて販売されています。世界銀行の新しい起債の多くはシンジケート団に複数の金融機関を指名することで、世銀債が幅広い地域で販売されるよう、努めております。 世界銀行の割引債は米国ドル建で 専用のプログラムを通じて発行されます。(金融機関リストにつきましては割引債世銀説明書 をご覧ください。)
割引債は、世界銀行が指名したディーラーのグループを通じて継続的に提供されます。利率並びに満期に関する情報は、ディスカウントノートプログラムの公認ディーラーから入手できます。
ほとんどの世銀新発債は条件決定日にブルームバーグやロイターといった通信システム上で公表されます。世銀債を引受けている金融機関は直接機関投資家へセールス活動を行います。シンジケーションのメンバーには数多くの支店網を持つ銀行(主に欧州の場合)が含まれることもあり、個人投資家にもこのようなルートで新発の世銀債が提供されます。個人投資家は金融紙上においても新発世銀債に関する情報を入手することが可能です。 世銀債に関する最新の情報は本サイト上の世銀債の商品性ならびに投資家への皆様へのお知らせでもご提供させていただいております。
世界銀行は、その財務状況に応じて既発の世銀債を全額または一部を買戻すこともあります。スタラクチャー債、新興市場国通貨建て債、少額発行の世銀債、一定の年月が経過した世銀債などはしばしば買戻しの対象になります。現時点での買戻し取引での最低金額は1,000万米ドル相当です。買戻し価格につきまして、市場実勢に準じたものになります。なお、買戻し取引につきましては世銀の公認ディーラー経由のみのお取扱となります。
世銀債は各国主要証券取引所に上場されています。世界銀行が発行するユーロ債の大部分はルクセンブルグ証券取引所に上場されています。起債通貨国の国内法に準拠して発行された世銀債は、通常、同国の証券取引所に上場されます。なお投資家の希望により、上場されずに私募債として発行されることもあります。
世銀債は様々な国際的決済システムや国内決済システムによって決済されています。最も広く利用されている振替決済機構は米国のDepository Trust Company (DTC) と Federal Reserve、ヨーロッパの Euroclear とClearstreamです。これらの機関間では相互に証券決済と現金決済がリンクしている電子決済システムが確立しており、証券の発行、保管、移転が可能です。
ニューヨーク連邦準備銀行は、米ドル建て世銀債の米国内の財務代理人兼支払代理人であり、連邦準備銀行により運用されているブックエントリー・システムを通じて債券を保管しています。Citibank, N.A.ロンドン支店は、米国で発行されDTCで保管される債券と、Euroclear、Clearstream等で保管される債券のグローバル・エージェントです。割引債の財務代理人もニューヨーク連銀です。
世界銀行は、統一的な債券ドキュメンテーション要綱を使っており、これにより新たな世銀債発行の殆どがGlobal Debt Issuance Facility (GDIF)に基づいて発行されます。GDIFは、新発債の大部分に適用される総括的な目論見書です。それに加え、世界銀行は個々の世銀債の条件決定補足書( Final Terms)を作成します。条件決定補足書には、各世銀債の条件の詳細が含まれています。GDIFの下では、残存合計金額に制限なく債券発行が可能です。
また割引債については 割引債世銀説明書 に詳細な情報が記載されています。
一般的には、世銀債を保有する投資家が属する地域の法律、税法その他に準拠します。世界銀行およびその財務代理人、支払代理人等が源泉徴収の義務を負うことはありません。
したがって一般的には、世界銀行から財務代理人・支払代理人に支払われる期日到来利息は利子課税額等が差し引かれない満額となります。なお、世界銀行が直接指名する財務代理人・支払代理人以外の金融機関にて源泉徴収がなされる可能性はあります。
なお、上記は税務上の助言を意図するものではありません。世銀債のご購入をご検討頂く際には、会計士等税務の専門知識をお持ちの方とご相談下さい。 税務上の取り扱いについてのより詳しい情報は目論見書(GDIF) ならびに割引債プログラム世銀説明書上にあります。
世銀債について更に詳しい情報が必要な場合は、以下までお問い合わせ下さい。
世界銀行財務局 Eメール :seginsai@worldbank.org
www.worldbank.org/ja/country/japanをご覧ください。このサイトでは、世界銀行の使命や構造、業務について詳しくご説明しています。