世界銀行のすべての業務は、極度の貧困の撲滅と持続的な繁栄の共有を促進するという2つの目標が基盤となっています。この意欲的な目標を達成するには、世界銀行が、開発分野において世界最高レベルのアイデアや知見、経験を開発途上国と共有していく 必要があります。世界銀行の海外拠点(カントリーオフィス)は、世界銀行のクライアントである援助受入国の最前線に位置し、国別・地域別の戦略策定を管轄します。開発支援プログラムが、当該国の個別の状況や政治的・経済的にも適したものであり、官民両セクターの解決策を組み入れたものとなるよう、国別プログラムを厳選するのもカントリーオフィスの役割です。国別プログラムへの支援に対し最高の開発知識の提供を可能とするために、世界銀行は14の専門分野と5つの「横断的専門分野」における知識や専門性を集結させた「グローバル・プラクティス」という枠組みを設定しました。気候変動への適応、食糧安全保障、エネルギーのアクセス向上等が「横断的分野」に該当します。 14の専門分野を担当する部門 は、実証に基づいた世界レベルの総合的なソリューションを提供し、支援国毎の特に複雑な課題に対処します。一方、横断的専門分野を担当する部門は、世界銀行グループ全体の重点課題に経営資源を集中的に投入します。
I. 資金使途
加盟国の持続可能な発展を支援
世銀債の調達資金は、世界銀行(国際復興開発銀行、以下IBRD )の加盟国の持続可能な発展を支援するプロジェクトやプログラムへの融資に活用されます。IBRDの融資対象国は、一定の一人当たり所得水準を越えた開発途上国で、IBRDはそれらの国々と協力して貧困の撲滅と世界における繁栄の共有を目標としています。そして世界規模での環境への影響にも配慮しつつ、持続可能な発展を目指します。IBRDが融資するプロジェクトとプログラムは、有効な社会的インパクトを達成するように設計され、公平で持続可能な経済成長を守るための厳格な審査と内部承認プロセス経て初めて実行されます。
気候変動、ジェンダー、雇用、官民パートナーシップ、脆弱・紛争・暴力の5つのテーマは、IBRDが特に重視してるもので、融資対象加盟国がこれらの問題の何れも犠牲にすることなく、持続可能な発展を達成できるよう、IBRDの融資は実行されます。
IBRDの運営費用は、主に融資によって得られる金利収入によって賄われています。資本勘定の資金運用や融資待機資金の市場運用もIBRDの収入源となっています。
プロジェクトの事例:
- 人材への投資(主に基礎的な保健と教育を通じて)
- 環境保護
- 開発途上国政府の機能の強化:サービスの水準、効率性、透明性の向上
- 安定的なマクロ経済を構築し、投資の促進と長期的な事業計画の策定を可能にする改革の促進
- 社会開発、社会的排除の解決 、ガバナンス、組織・制度の構築の重視(貧困削減の主たる要素)
すべての世界銀行プロジェクトは、適格基準を満たすだけでなく、世界銀行の環境・社会セーフガード・ポリシーに従うことが求められています。セーフガード・ポリシーの詳細は、以下のウェブサイトをご参照ください。 : https://www.worldbank.org/en/projects-operations/environmental-and-social-policies
II. プロジェクト選定のプロセス
世界銀行のプロジェクトはいずれも、援助受入国とのパートナーシップにより、世界銀行が最も貢献できる分野を優先しながら、慎重に選定されます。選定プロセスは、以下の5つのステップで構成されています。
- ステップ1. 体系的国別診断を実施:各国の状況とそれぞれに期待される開発の分析に戻づき、貧困と格差の削減を実現するための最大の問題を特定。同時に、実現し得る最大の効果も特定
- ステップ2. 国別支援フレームワーク(CPF)の策定:当該国の比較優位と、「極度の貧困削減」と「繁栄の共有を促進」という世界銀行の使命との整合性に照らし、当該国の開発目標の中で、どの目標の達成を世界銀行が支援できるかを特定
- ステップ3. 個々のプロジェクト/プログラムを特定: 評価・査定:当該国と協力し、環境、社会、財政面の持続可能性を評価するフィージビリティ・スタディ等を実施
- ステップ4. 個別プロジェクトを理事会が承認:ステップ3で策定された 国別支援フレームワークと整合性があり、世界銀行の二大目標達成に貢献するプロジェクトを理事会(加盟国を代表する25名の理事で構成される常設理事会)が承認
- ステップ5. プロジェクトの進捗をモニター、 教訓を蓄積: 目標達成に向け、政府機関がプロジェクトの進捗状況を報告し、世界銀行が少なくとも年間2回の正式な見直しを行っています。さらにプロジェクト終了時には、得られた教訓についてレビューも実施。また各プロジェクト毎の個別評価を実施
III. 世銀債で調達した資金の管理
世銀債で調達した資金は、適格なプロジェクトおよびプログラムへの融資支援に使用されるまでの間、IBRDの厳格な流動性ポリシーに基づき運用・管理されます。適格プロジェクトへの融資は、IBRDで設定された方針と手順に基づいて実施され、プロジェクトの各プロセスの進捗状況 に応じて必要な金額を分割して実行していくため、しばしば数年間にわたって行われます。
IV. プロジェクトのインパクト:モニタリングと報告
すべてのプロジェクトは、世界銀行の監督の下に進められます。援助受入国は、プロジェクト融資契約に従い開発プロジェクトを実施します。契約には、プロジェクト進捗状況に関する中間レビューなど、実施を担当する政府機関による定期的な報告も含まれています。プロジェクトの進捗状況、成果及びインパクトは、政府と世界銀行が実施段階においてモニターし、設定された目標が達成されたか否かについて、プロジェクトの最終的な効果を評価及び測定するためのデータを収集します。この資料はプロジェクト文書と共に公表されます。プロジェクト終了後には、世界銀行の独立評価グループによる監査も行われています。
V. 透明性とコンプライアンスの確保
世界銀行のセーフガード、ポリシー、手順はすべてのプロジェクトに適用されます。これには世界銀行の財務管理の専門家と、プロジェクト実行のためのリソースを調達 する専門家のレビューが含まれ、プロジェクト資金の使用に関して適切な受託管理が、国やプロジェクトレベルで実行されているか確認します。
また透明性を確保するため、世界銀行のオープン・データ・イニシアチブを通じて、プロジェクトや業務に関する文書や成果報告書等の情報にアクセスできます。世界銀行財務局のウェブサイトでは、特定のプロジェクトに関する情報や、注目される取組みをご紹介するニュースレターへのリンクも公開しています。