世界銀行のグリーンボンドの資金は、気候変動防止に寄与する開発支援のための一定の選定基準を満たし世界銀行の環境や地域の専門家により選定されたプロジェクト(グリーンプロジェクト)を支えています。世界銀行グリーンプロジェクトは世界銀行のその他のプロジェクトと同様に、途上国の貧困撲滅と経済成長を目指していますが、途上国に深刻な被害をもたらす気候変動の防止に焦点を当てて取組むプロジェクトです。
世界銀行グリーンプロジェクト
世界銀行が発行するインパクトレポートでは、グリーンボンドの資金が活用される適格プロジェクトについて公表しています。本レポートには、各プロジェクトの環境及び社会的影響を示すいくつかの成果指標も含まれています。これらの指標は、予想される成果と規模をさまざまな分野別や国別に分類して分かりやすく数値化しています。
I. 再生エネルギーとエネルギー効率化
中国 - エネルギー効率化プロジェクト(第一次): 中国の製造業のエネルギー消費量は中国全体の約5割を占めており、世界的に見ても高比率です。本プロジェクトでは、大・中規模の企業や産業全体に対しては、試験的な省エネ対策プログラムと持続可能なの事業融資を提供し、中国政府のエネルギーの効率化制度ならびにプログラム強化への支援も行っています
中国 - 第二次エネルギー効率化プロジェクト: 第一次エネルギー効率化プロジェクトに基づき、中国の省エネ支援会社(ESCO)の拡大を支援するプロジェクトです。世銀が中国民生銀行に1億米ドルの貸出しを行い、同銀行が様々なエネルギーの効率化促進プロジェクトを対象に電力産業や省エネ支援会社(ESCO)に貸出しを行います。
中国 - 上海におけるグリーンエネルギー促進プロジェクト: 急速な都市化により、今後20年の間に3億人もの人が中国都市部へ集中し、居住用建物でのエネルギー消費量は現在の3倍に膨れ上がり、二酸化炭素の排出量も大幅に増加すると予測されています。本プロジェクトは長寧区を中心としたグリーンエネルギー計画を促進し、上海の低炭素化開発を目指します。
中国 -遼寧省での暖房設備の効率化と環境改善プロジェクト: 中国の北東に位置する遼寧省では、石炭を燃料とした効率の悪いボイラーや熱併給型発電プラントが主な暖房設備となっています。本プロジェクトでは発電や製鉄からの廃熱を利用した集中管理暖房システムの普及を支援し、エネルギー効率の高い大規模システムに入れ替えます。さらに、ガス輸送設備の再建やガス貯蔵設備の拡大を含む都市ガス設備の改善を目指します。
中国 - ウルムチ市における暖房設備効率化プロジェクト: 中国の北西に位置する新疆ウイグル自治区ウルムチ市では、冬季の家庭用暖房が主因の大気汚染に苦しめられています。本プロジェクトは、ウルムチ市の自治体による230万人の住民の為の大気汚染改善の取り組みを支援するものです。主にウルムチ市の二つの市轄区と天山区の一部のエリアを対象に、効率が高く環境にやさしい暖房設備建設向けの貸出しを行います。
中国 - 山東省 エネルギー効率化プロジェクト:中国は2005年から2020年までの間に、GDP対比のCO2排出量を40-45%削減することを目標としています。本プロジェクトは、中国で二番目に大きい山東省で、バイオマス燃料を利用した熱電併給プラントの建設を支援します。
インド - 第四次電力供給システム改善プロジェクト: インドでは電力供給システムが脆弱なため潜在的な成長力が抑制されており、電力が供給されていない居住地区も数多く存在します。世界銀行のプロジェクトにより、送電設備を刷新することで送電ロスを削減し、環境への負荷を軽減することができました。具体的には水力発電の余剰電力を電力が不足する地域に融通することで石炭発電所の乱立を回避することができました。
ジャマイカ - 燃料確保とエネルギー省エネ拡大プロジェクト: ジャマイカは石油の輸入依存度が高く、燃料費も非常に高くなっています。また、今後5年間で燃料の需要増加と老朽化した発電設備の刷新により、新たに約500MWの発電設備が必要になると試算されています。本プロジェクトは、同国の各種電力供給源(エネルギーミックス)への再生可能エネルギーや天然ガスの活用促進、省エネ度の高い電気製品やエアコンの基準やラベル表示の策定などを支援しています。
メキシコ - 省エネ電球、電気製品普及プロジェクト: メキシコにおける温暖化ガス及び大気汚染物質の6割はエネルギー消費から発生しており、工業や交通、発電設備が最も多く燃料を消費しています。特に住宅での電力消費量は、現時点でもメキシコのGDP成長率よりも急ピッチで増加しており、今後エアコンや家電製品の普及は電気消費量の増加に拍車をかけることが明白です。こうした状況に対処すべく、本プロジェクトはメキシコ政府が行う住宅地における省エネ対策プログラムを支援しています。
モンテネグロ - 公共施設のエネルギー効率の改善: モンテネグロでは国全体の電力需要の1/3を輸入に依存しています。需要の急増、国営発電設備の老朽化に加え、エネルギー効率の悪い公共施設が電力事情の悪化に拍車をかけています。世界銀行は、エネルギーの効率的利用を促進するプロジェクトを実行し、新しい設備を導入することで、学校や病院などの公共施設でのエネルギー消費と居住性の改善を同時に実現しました。さらに、省エネ技術を積極的に提供し、新しい省エネ基準を国全体に導入しました。
トルコ - 民間セクターの再生可能エネルギーとエネルギー効率化プロジェクト: トルコのエネルギー源の大部分は化石燃料です。電力需要の増加に伴い、高いコストと温暖化ガスの更なる排出という問題に直面しています。世界銀行の本プロジェクトによって、民間電力市場が主導する形で様々な再生可能エネルギー源からのエネルギー生産が増加することが期待されています。
トルコ - 中小企業の省エネ化プロジェクト: トルコの工業・建築産業は政府系機関の支援の下、年間1500万トン相当(年間消費電量全体の14%)のエネルギー削減という意欲的な目標を掲げており、官民挙げて温暖化問題に取り組んでいます。本プロジェクトは、同国民間銀行の省エネ分野への貸出しをバックアップし、トルコの中小企業でのエネルギー消費効率化を目指しています。
ウクライナ - 省エネルギー化プロジェクト: ウクライナ政府はエネルギー消費量を2015年までに20%、2023年までに50%削減することを目標にしています。本プロジェクトは、ウクライナの事業会社ならびに地方自治体が運営する事業団体や電力供給会社の省エネルギー対策に向けた貸出しを行うもので、約260万立方メートルのガスと400ギガワット相当のエネルギー削減が期待されています。
ウクライナ - 送電設備の向上とエネルギー部門の改革と開発プロジェクト: ウクライナでは新たに効率の良い発電設備を導入しましたが、送電施設の構造上の問題で一部の地域では需要増加時の電力供給が不安定となっています。そのため、バックアップ電源として二酸化炭素を排出するディーゼル動力が普及しています。本プロジェクトでは送電設備を改善して温暖化ガスの削減しつつ国営電力供給会社を支援し、総エネルギー消費量の10%減を目指します。さらに同社のEU域内での電力の売買の支援も行っています。
中国 - 北京での太陽光発電普及(サンシャインスクール) プロジェクト: 本プロジェクトは、中国の教育施設における太陽光発電を拡大するために再生可能エネルギー供給サービス会社を調査し、グリーン電力の消費を促進することを目的としています。通称「サンシャインスクール」は、約1,000の公立学校に100メガワットの太陽光発電設備を設置するプログラムで、公共部門においては最も大規模なものとなっています。
中国 - 上海におけるグリーンエネルギー促進プロジェクト: 急速な都市化により、今後20年の間に3億人もの人が中国都市部へ集中し、居住用建物でのエネルギー消費量は現在の3倍に膨れ上がり、二酸化炭素の排出量も大幅に増加すると予測されています。本プロジェクトは長寧区を中心としたグリーンエネルギー計画を促進し、上海の低炭素化開発を目指します。
中国 - 江西省 水路と水力発電施設プロジェクト: 急速な経済成長下にある中国では、政府は道路と陸上輸送の整備には積極的ですが水路輸送の整備は進んでおらず、大型船の導入等による効率的な水路の活用が必要とされています。かねてより中部地区の江西省では水路を利用した内陸輸送が発達しており、本プロジェクトでは、同地区における水路輸送の拡大、水力発電による温暖化ガス削減と470ギガワット相当の電力確保、4,400ヘクタールの農耕地の水害からの保護などを目標としてます。
インド - 第四次電力供給システム改善プロジェクト: インドでは電力供給システムが脆弱なため潜在的な成長力が抑制されており、電力が供給されていない居住地区も数多く存在します。世界銀行のプロジェクトにより、送電設備を刷新することで送電ロスを削減し、環境への負荷を軽減することができました。具体的には水力発電の余剰電力を電力が不足する地域に融通することで石炭発電所の乱立を回避することができました。
インド - ランプール水力発電プロジェクト: インドが年間排出する二酸化炭素は、世界の排出量の4%を占めており、2031年までには13%まで増加すると見られています。一方で、農村地域等においては電力インフラが未だ整っていません。本プロジェクトは、412メガワット規模の建設を支援し、インド北部の送電網へ水力発電による電力供給を実現し、インド政府が掲げる効率的で環境や社会にやさしい水力発電の構築と運営の向上を目指しています。
インドネシア - 地熱発電プロジェクト: インドネシアでは化石燃料を利用した発電が主流で、温暖化ガス削減のために地熱発電の強化を目指しています。本プロジェクトでは、地熱の発掘調査と蒸気処理設備、地熱発電所2ヶ所(出力合計150メガワット)の建設を支援しています。
ジャマイカ - 燃料確保とエネルギー省エネ拡大プロジェクト: ジャマイカは石油の輸入依存度が高く、燃料費も非常に高くなっています。また、今後5年間で燃料の需要増加と老朽化した発電設備の刷新により、新たに約500MWの発電設備が必要になると試算されています。本プロジェクトは、同国の各種電力供給源(エネルギーミックス)への再生可能エネルギーや天然ガスの活用促進、省エネ度の高い電気製品やエアコンの基準やラベル表示の策定などを支援しています。
メキシコ - 電力供給サービスの一体化プロジェクト: このプロジェクトは、メキシコ南部の世帯数50から500人程度の小規模な居住地への電力供給を増やすことを目的としています。遠隔地に電力を提供すべく、安定した電力市場の開発に必要な規制及び技術的支援を行いながら、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの利用促進を支援しています。
モロッコ - 集光型太陽光発電プロジェクト: モロッコの南ワルザザード地区は、太陽光発電に適した様々な条件が揃っており、EU内での環境負荷のほとんどない発電が実現可能と見られています。世界銀行は、いくつかの国際機関、政府機関、クリーンエネルギー基金と協力して、同地区での集光型太陽光発電システム導入の第一次貸出しを実行しました。世銀の貸出し金額は2億米ドルで、500メガワットのうちの160メガワットの発電設備が導入されました。
ペルー - 第二次 農村地電力供給プロジェクト: ペルーでは都市部の91%の人々が電気を利用できるのに対し、農村部では僅か30%にとどまっており、農村地域における貧困の原因となっています。本プロジェクトでは、既存の配電網の拡充や遠隔地及び小規模太陽光発電設備の導入などにより、同地域への電力供給を支援しています。
トルコ - 電力需要の増加に伴い、高いコストと温暖化ガスの更なる排出という問題に直面しているトルコでは、バイオマス、地熱、太陽光などのエネルギー源の活用は進んでいません。本プロジェクトは、民間電力市場が主導する形で様々な再生可能エネルギー源からのエネルギー生産が増加することを目的としています
II. 交通
中国 - 西安都市交通プロジェクト: 中国の古都の一つである西安は歴史的にも文化的にも著名で、毎年多くの観光客が訪れています。しかし西安では都市化が急速に進み、深刻な大気汚染により人々の健康だけでなく、文化遺産までもが深刻な被害を受けています。本プロジェクトでは、自転車専用道路と歩道の利用者の増加、多機能な道路ネットワークの開発による渋滞緩和、バスなどの公共交通の活性化など、中国の交通セクターと共同で様々な温暖化ガス削減に取組み、人々の健康と文化遺産の保護を支援します。また、持続可能な都市交通制度及びプログラムの開発が続けられるよう人材育成するなどの支援も行っています。
中国 - 江西省 水路と水力発電施設プロジェクト: 急速な経済成長下にある中国では、政府は道路と陸上輸送の整備には積極的ですが、水路輸送の整備は進んでおらず、大型船の導入等による効率的な水路の活用が必要とされています。かねてより中部地区の江西省では水路を利用した内陸輸送が発達しており、本プロジェクトでは、同地区における水路輸送の拡大、水力発電による温暖化ガス削減と470ギガワット相当の電力確保、4,400ヘクタールの農耕地の水害からの保護などを目標としてます。
中国 - 武漢市 第二次都市交通プロジェクト: 中国はエネルギー関連による温暖化ガス排出量が世界で最も多く、排出量は1990年から2009年にかけて3倍も増加しました。このため公共交通機関の整備が急務となっています。本プロジェクトでは、武漢市における公共交通機関の運営の向上と歩行者や自転車利用者のために信号機や歩道などが整備し、大気汚染の緩和と温暖化ガスの削減を目指します。
コロンビア - エネルギー効率の高い輸送システムの導入プロジェクト: コロンビアの人口の約75%は都市部に居住しており、その住民の大部分が公共交通機関を利用しています。しかし公共交通機関は、深刻な交通渋滞、事故や犯罪の高い発生率、身体に有害な空気、汚染物質の排出等の多くの都市問題の原因となっています。コロンビア政府と世界銀行は協力して、エネルギー効率が高く、安全でクリーンな新たな大量輸送公共交通システムを導入し、老朽化したバス・システムから生じていた温暖化ガスの排出が大幅に削減されました。
インド - 都市交通プロジェクト: インドは温室効果ガスの排出量が世界で3番目に多い国で、特に都市交通の急速な拡大がその要因となっています。この都市交通プロジェクトは、インド政府や地方自治体が自ら公共交通機関、自転車専用道路、歩道などの車を使わない都市交通の整備を強化し、運営していけるよう支援するもので、インドの6つの都市で試験的に行われています。
メキシコ- 公共交通機関の効率化プロジェクト: メキシコの公共交通機関が排出する温暖化ガスは、ラテンアメリカの中でも最も多く、同国全体の排出量の18% にも達します。世界銀行のプロジェクトにより、バス専用レーンなどのインフラが整備され、安全で燃費の良いバスの車両が新た導入されました。この取組みにより、温暖化ガスの排出が抑制され、公共交通機関のサービス水準も向上しました。
III. 廃棄物管理
ブラジル - ごみ処理改善とカーボンファイナンス促進プロジェクト: 2007年時点で、ブラジルの39%の都市しか適切なごみ処理の実行及びごみ処理施設を有していませんでした。本プロジェクトは、メタンガスの発生を抑えながらブラジルの地方自治体のごみ処理能力を向上させる事が目的です。プロジェクトでは、野外ゴミ捨て場の閉鎖と最新で衛生的な埋立地又はごみ処理設備の建設と運営、地方自治体によるごみ処理運営の強化、ごみを拾って生活する貧困層の削減、ごみ処理分野への民間企業の参入促進、カーボンファイナンスプロジェクト運営のための公的な実行機関であるCaixa Economica Federal(カイシャ・エコノミカ・フェデラル:ブラジル連邦貯蓄銀行)の能力向上、少なくとも3箇所の埋立地でのメタンガス回収などを支援します。
ヨルダン - アンマンのごみ処理プロジェクト: アンマンでは、ごみ収集にかかる運搬のコストが非常に高いうえ、今後220万人の住民から排出されるゴミの量を勘案すると必ずしも適切な方法でゴミが処理されている訳ではありませんでした。世界銀行が実行したゴミ埋立処理プロジェクトにより、全国のゴミ埋立処理設備の処理能力が大幅に向上しました。
モロッコ - ごみ処理開発政策融資プログラム: 本プログラムは、モロッコ政府によるごみ処理セクターの明確な組織化及び政策策定や規制化、運営体制における重複やギャップを解消し、規制や制度を見直して、ごみ処理セクター改革を支援するものです。また、ごみ処理プログラムに対する財政や環境、社会の持続性向上を目指します。
IV. 農業・森林管理
中国 - 中国農村におけるエコプロジェクト: 中国では数百万もの世帯が、農業で生計を立てており、将来的に自然資源をより活用することが需要になっています。世界銀行の中国農村地区で実行したエコプロジェクトにより、畜産業での家畜排泄物を有効活用して住民が再生可能エネルギーを無償で使えるようになりました。
V. 環境強化・その他
メキシコ- 気候変動対策 開発支援プログラム: 水の供給が不安定で災害の多い国であるメキシコは、温暖化による被害が多いと言われています。一方、温暖化ガスの排出量が世界で12番目に多く、ラテンアメリカの中ではブラジルに続き2番目に多い国(2008年)でした。本プロジェクトは、メキシコ政府の気候変動対策プログラムを支援し、642,000ヘクタールの再森林化、カーボンファンド設立に向けた国内排出権市場の育成、5つの都市及び州に対する気候変動対策計画の調査、再生エネルギー開発とあらゆる産業セクターによる温暖化ガス削減対策などが含まれます。
インパクトレポートの仕様の統一化に向けた取り組み
インパクトレポートへの市場参加者の関心が高いことと、この分野における透明性並びに比較性の高さがグリーンボンド市場に有益であることを受けて、世界銀行は、アフリカ開発銀行・欧州投資銀行・国際金融公社と協力してグリーンボンドのインパクトレポートの仕様の統一化について議論をしました。
初のインパクトレポートは、2015年に発表されました。各種インパクトレポートにつきましては本ウェブサイトよりダウンロード可能です。ダンロード可能な要約版インパクトレポートは他の発行体や投資家とのグリーンボンドに関する情報共有や話し合い、他のグリーンボンドの発行体自身のインパクトレポート作成のためにも活用できます。